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企業が知るべき中途採用力の必要性

 中途採用の激化、高度化

このところ、中途採用を取り巻く環境が大きく変化しています。総務省の発表によると、2005年9月の有効求人倍率は0.97倍、完全失業率は4.2%になりました。これは、それぞれ13年ぶりの高さと、7年ぶりの低さであり、どちらの数字も人材を採用する企業よりも転職をする個人に、より有利な状況であることを示しています。それらを裏付けるように、大手人材紹介会社が抱える求人案件も軒並み、バブル景気、ITバブルの頃を上回り、過去最高になっています。

一方、転職を希望する個人を取り巻く環境も大きく変化しています。リストラの普及や転職に対する意識の変化もあり、転職希望者数が増加していることはもちろんのこと、インターネットの普及が、転職希望者の実人数以上に転職希望者の延べ人数を大幅に増加させています。クリックするだけで20社、30社に簡単に応募できるようになったことや、転職支援サイトの普及などがこれに大きく影響しています。

企業と個人を取り巻くこのような環境の変化によって、現在、企業間の中途採用競争は激化し、高度化しています。企業がこの状況において、何もせず手をこまぬいていれば、採用できる人材の質、数、1人あたりの採用コストなどは悪くなる一方です。

 間違いだらけの中途採用

いろいろな企業のトップや人事責任者と話をしていると、採用が難しくなってきているのは実感しているものの、どう対処したらいいか分からないというのが本音のようです。ほとんどの企業が、自分たちの採用手法には手を加えることなく、かけるコストを多くすることだけでそれに対処しようとしていることからも、このことがうかがえます。

現実には、紙媒体やWeb媒体に出す求人広告の反応は下がる一方ですし、人材紹介会社に紹介を依頼しても応募者が思うように集まらなくなってきています。採用に対する姿勢や採用手法を変えていかないと、思うような結果を出せない状況になりつつあります。

大きく見ると、ひとつには「待ちの採用」か「攻めの採用」か、という問題があります。従来は、紙媒体やWeb媒体を通してマスに求人広告を出して応募してくるのを待つ、という「待ちの採用」が一般的でした。しかし現在は、これでは採用実績は悪くなる一方です。「どこにいるどういう層の人が必要だから、それに向けてどうアプローチしていくか」という「攻めの採用」が必要になってきています。採用戦略が「待ち」から「攻め」に変わると、採用に対する心構えから、選考プロセスの作り方まで大きく変化してきます。

もうひとつ、「新卒採用」と「中途採用」の違いという問題もあります。いまだに大手企業でさえ、両者の違いをしっかり認識しないまま、採用を進めていることが多く見られます。確かに「人を採用する」ということに関しては、中途採用も新卒採用も同じですが、それに向けて企業がするべきことは大きく違います。

例えば、日本で新卒採用の対象となる学生は、おおむね3月に卒業することが決まっていて、企業もそれを前提に採用活動を行います。つまり、就職意欲もほぼ顕在的であり、就職活動・採用活動の時期もだいたい決まっています。そのため採用戦略としては、突き詰めれば、狙った層を中心にどのくらいの大きさの母集団を形成し、どのくらいの率で絞っていくか、あるいは説得していくかということが基本になります。

一方、中途採用の対象となるのは、顕在的な転職希望者とは限りません。どこの企業でも優秀で高い実績を挙げている人ほど、転職を希望する確率は低いですから、優秀な人を採ろうと思えば思うほど、顕在的な転職希望者だけでなく、潜在的な転職希望者や非転職希望者にもアプローチする必要がでてきます。

中途採用と新卒採用の違いは、スピード・タイミングの問題でもあります。中途採用では、内定通知書(条件提示書)に有効期限を設けることが多く、応募者がどこかの会社の内定を持ったまま、長期間にわたって他の会社をいくつも受けることはほとんどありません。そのため、その応募者が受験している他の企業よりも速いペースで選考を進めることが中途採用を非常に有利にしてくれます。

中途採用ではピンポイントの採用が多いために、採用枠が新しくできたり消えたりすることが頻繁な上、例えば、来月から新規事業を立ち上げるとか、今期中に採用しないと採用枠がなくなってしまう、というタイミングの問題も重要です。

中途採用で高い成果をあげようと思えば、この潜在的な転職希望者や非転職希望者に対するアプローチと、スピード・タイミングの問題をいかにうまく解決していくかが大変重要なポイントです。

こういった違いがあるにもかかわらず、まだ中途採用を新卒採用の延長線上にあるもののように考えて採用を進めている企業が多く見られます。どちらかと言えばむしろ、新卒採用戦略を中途採用にも活かすのではなく、中途採用戦略を新卒採用戦略に活かす方が有効な面が多いでしょう。

 中途採用力の必要性

新聞や雑誌などが載せる企業の経営分析では、経営者の素晴らしさや、営業力、マーケティング力、財務力、組織力、研究開発力などの強みは取り上げても、中途採用力について取り上げることはありません。

しかし、現在はIT化やボーダレス化の進展、提携・協業、合併・買収の増加、中国・インド関連ビジネスの拡大など、ビジネス環境が急ピッチで変化しており、専門的な知識や経験を持った即戦力人材を採用できるかどうかは、緊急の経営課題です。

今後、中途採用力の向上を意識する企業としない企業との間に、大きな差が生まれることは間違いありません。ぜひしっかりと中途採用力を意識しながら、採用を進めていただきたいと思います。

牛久保 潔(うしくぼ きよし)
株式会社プロッソ 代表取締役社長


<プロフィール>
日本DEC(現、日本ヒューレット・パッカード)、日本オラクルを経て、2003年、中途採用に特化したコンサルティングと人材紹介を行うプロッソを設立。以来、大手・中堅企業を中心に、実践的なサービスを提供。中途採用力UPメールマガジンやセミナーを実施中。 <株式会社プロッソ> http://www.prosso.com
※nikkeibp.jp events SPECIALより転載

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