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【第3回】マインドセットの向上で自分を高める

なぜ不足するセキュリティ技術者

「東京都における情報処理技術者の有効求人倍率は8倍以上。希望者があればすぐにご紹介しますが、御団体の採用予定の希望者はなかなか現れないかもしれません。」

今年の春、SEA/J(セキュリティ・エデュケーション・アライアンス・ジャパン)では、人材紹介会社に頼み技術者を採用しようとしたが、いつまで待っても紹介がない。しょうがなくハローワークに相談に行った時の担当者の言葉である。

さぞや優秀な人材がいるのではないかと思ったが、ハローワークの担当者の話を総合すると、情報処理技術者としての職務経験がほとんどない人まで、情報処理技術者として登録するらしい。求める人材スキルで探すとほとんど見つからないか、相当な高給取りとなるそうだ。

他の職種からのキャリアチェンジを狙って学習したり資格を取得したりするのかといえば、就業者も求職者も、わざわざ新たな仕事に就くために学習する意欲もそれほどはないらしい。学習意欲については、がんばる者とそうでない者に二極化しているのかもしれない。

技術力向上だけではないプロフェッショナル育成

最近の情報セキュリティ対策のためのシステム構築は非常に複雑だ。運用も高度な技術と豊富な経験を持つ人材があたる必要がある。このため前回の記事で取り上げた通り、技術対策のための研修コース受講や資格取得は、セキュリティ対策に不可欠な人材を育成するために重要である。しかし、それだけでは不十分であり、マインド部分の醸成も必要になる。

例えば、高性能な車で注目されるのは、通常は強力なパワーを生み出すエンジンであるが、そのパワーで生み出された高速を急速に減速するブレーキの存在も見逃すことはできない。両方の性能をバランスよく高めてこそ、高性能マシンである。このように、何かの能力を高めると、相反する力も高めることが、総合的にそのものの存在感を高めることになる。

情報セキュリティの対策にあたっては、よく「桶の理論」が引き合いに出される。桶は木片を集めて箍(たが)で隙間のないように締め上げて作る。もしも一部でも木片の高さが低ければ、ほかの木片が長くても一番低い木片の高さまでしか水は溜まらない。

これは組織のセキュリティ対策に当てはめられる。全体にバランスよく対策を施す必要があるのだ。この2つの話はセキュリティ対策全体にも言えるし、個人個人のスキルアップについても該当する。

個人も組織も成長には投資が必要

企業においては内部統制の確立が喫緊の課題と言われている。2006年5月から施行された会社法では、自由とともに規律が求められている。2006年6月7日に成立した日本版SOX法と言われる金融商品取引法でも、内部統制の確立が明文化されている。

内部統制は会社の規律である。セキュリティ対策とイコールではないが、内部統制の確立にはITシステムの活用は必然である。システムおよび情報セキュリティは必須で求められることになる。

規律を守るということと、自由な発想をするというのは相反するイメージだが、現実には両方が優れている会社も多いし、どちらも低いレベルにとどまっている企業もある。勝ち組、負け組みと言われるが、苦しくてもいかに必要な資源に投資をしてきたかがその分かれ目となっているようだ。

マインドセットを高めて成長する能力を育成する

最後に、マインドセットを高めるためのポイントを挙げておこう。

まずは、理想と現実のギャップを明確にすること。

人材育成ではよく言われることだが、理想とする自分の姿と、現在の自分の能力を正確に把握して、スキルギャップを明確にすることが必要だ。学習すべき内容を明確にするためでもあるが、もっと重要な理由がある。ギャップの明確化により理想に近づこうとする力、つまり、学習意欲が高まるのである。

もうひとつは、対話の重要性だ。

個人の学習において、対話とは、自分自身で内省をし、思い込みをなくすことだ。人間は、どうしてもイメージや思い込みで自らを制限したり、履き違えてとらえることがある。事実や疑問点を明確にし具体的に考える、あるいは繰り返し問いかけるといった行動により、正しく知ることができる。

この2つのポイントは、個人のマインドを上げるためにも有効だが、チームとしての必要能力でもあり、組織の仕組みとしても考えていくべきであろう。

最後に筆者より。効果的な学習スタイルは自分自身で作り上げるものでもある。自分への投資を惜しまず、豊かな知識を蓄えてほしい。

持田啓司(もちだひろし)
大塚商会・教育ビジネス販促課 課長
http://it.e-otsuka.com/edu/index.html

<プロフィール>
官庁において情報システム部門などを経験した後、独立系IT教育専門会社で地方事業所の新規開設責任者として従事。その後、現職で企業向け教育の企画・プロモーションを行う。現在は特に、情報セキュリティ教育に関する活動を精力的に行い、JNSA(日本ネットワークセキュリティ協会)情報セキュリティ推奨教育検討ワーキンググループリーダー、SEA/J(セキュリティ・エデュケーション・アライアンス・ジャパン)研究員としても活動している。
ITコーディネータ、情報処理技術者(上級システムアドミニストレータ、情報セキュリティアドミニストレータなど)をはじめ、MCSCなどベンダー系資格保有。
※nikkeibp.jp events SPECIALより転載

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