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組込み開発現場の魅力と課題、適切な技術者教育形態について

〜ものづくり産業が国際競争で生き残る鍵を握る組込みソフトウェア開発〜

以前掲載したコラムで、組込みシステム技術者が不足していることをお伝えしました。今回は、実際に組込みソフトウェア開発業務に関わっている人の「生の声」をお届けします。技術者不足によって起こる問題だけではなく、開発現場でしか味わうことのできない魅力についてもお伝えします。

世の中に出る製品の開発に携われる楽しさ

大量生産され、広く一般に知られている電気製品の多くは小さなリソースしか持たないマイコン(マイクロコンピュータ)で動作する組込みソフトウェアによって制御されています。見た目には簡単そうに見える装置でも、予期しない操作にも対応できるように、ありとあらゆる要件を検討し、設計に反映させています。実際、スイッチが2〜3個、LEDが数個の製品でさえ、開発には多くの「産みの苦しみ」を伴います。ハードウェアのリソース不足(大抵はコスト面から来るROM/RAM容量やCPU処理能力)以外にも、企画の考え、メカ設計の都合で組込みソフトウェアにしわ寄せが及ぶことも多々あります。

そんな中で、最良点を見出すためには、関係する多くの人と話をする必要があります。場合によっては、トップ責任者に対して「自分はこの製品を買うつもりで作っている。自分ならこういった機能仕様(設計)でないと買わないし、使わない。」とまで言い切って、とことん議論することさえあります。

そんな「産みの苦しみ」を乗り越え、最終的に製品となって市場に出回った時には、自分の作った製品を多くの人が使っているという達成感があります。開発に携わった自身の経験値となって、成長していくことも実感できます。普段、自分の仕事についてなかなか理解してくれない人がいたとしても、「自分が関わった製品はこれです!」と言えば、すぐに理解してもらえます。

わずか2〜3カ月で仕上がってしまう小さな開発から数年にも及ぶ大規模な開発まで、小さなマイコンのために大きなプログラムを載せる組込みソフトウェアの仕事に関わると、開発者は大抵の場合、「自分で動かしているという楽しさがある」と言います。「買ってくれるお客様に対する大きな責任が自分に託されている」という使命を誇りに思っている技術者も大勢います。

実務経験の浅いエンジニアも「面白かった」「うれしかった」と感じることで本人自身が成長したことを実感し、自信となっていきます。当社でも、この体験の積み重ねにより、1年前まで学生気分が抜けきらなかった新入社員が組込みソフトウェアの開発を経てずいぶんたくましくなっていることに驚かされます。

何よりも組込みシステム開発に携わることで、昨日までどのように動くのか全く分からない「ブラックボックス」だった製品が、ある日突然、中で何がどのように動いているか分かってしまう「閃き」に近い快感を得ることができます。「自分だったらこう作る」「こう動かしたい」というアイデアも浮かび、それが次の開発につながるのです。

既存イメージによる敷居の高さを下げるために教育カリキュラムを活用

日常生活の身の回りで多くの組込みソフトウェアが動いていることに気付くと、そこには多くの可能性が秘められており、また活躍できるチャンスが山のようにあることを認識することができます。

組み込みソフトウェアという分野が情報処理産業なのか製造業なのか統計的に曖昧だったので、産業として認識されておらず、実態は埋もれてしまっています。「得体の知れない難しい分野」「パソコンは扱えても手出しできない特殊な世界」というイメージも社会全体に蔓延しているのではないでしょうか?

組込みソフトウェア技術者は、需要がありながら大変な人材不足に陥っていることは事実です。IT系エンジニアからのシフトも、求められるスキルが異なることを理由にシフトしにくい、シフトするにも勉強も何をすれば良いのか分からないなど、多くの障壁が存在しているのです。この「勉強の仕方が分からない」というのは、人によっては驚かれることでしょう。

初級の組込みソフトウェア技術者の多くは製品開発をしている企業の中で初めて学び、失敗を繰り返しながら経験を積んでいきます。その自社育成にしても、講師役の先輩エンジニアが多忙を理由にいい加減に教えたり、逆に短期育成の名の下に詰め込み過ぎてしまい消化不良を起こしているとか、社内OJTも充分な効果を出せていないというのが現状です。

教育内容や用語が社内でしか通用しない「風習」や「方言」となってしまい、他から優秀なエンジニアを投入しようとしてもなかなか話が通じない、対象となる製品開発と求めるスキルとが一致しないなどで、うまく軌道に乗らないという事例もあります。

組込みソフトウェア技術者が不足しているために、専門外のハードウェア技術者がなんとか動くプログラムを組んでいるという状況も現実にありますので、教える側、教わる側とも今のままでは限界が来ると考えられます。

組込みソフトウェア技術者の標準的な土台を築き、底辺の底上げを目指す場合、(大きな組織で、社内に教育システムが完備している企業は良いのですが、)全くゼロからの学習や、他分野からのシフトによるエンジニアの早期養成などは、対象が明確でバランスの良い専門の社外カリキュラム(OFF-JT)の活用をはかり、企業内リソースを削ることなく、効率よく、組込みソフトウェア技術者を増やす取り組みが必要です。

学習の成果確認、方針決定のための
JASA組込みソフトウェア技術者試験(ETEC)

ETEC組込みソフトウェア技術者となるための教育とは別に、組込みソフトウェア開発に関わっているエンジニアのスキル判定のための基礎的な組込みソフトウェア開発能力をチェックする試験、指標というものがこれまでありませんでしたが、2006年11月からスタートした「JASA組込みソフトウェア技術者試験(ETEC)」は、そういった要望にマッチする試験です。

筆者自身、スキル確認に“使える試験”なのか調べるためと、“腕試し”のためにスタート直後に受験してみました。JASA組込みソフトウェア技術者試験クラス2は、知識を問う問題しかありません。長年経験を積んだエンジニアでも全く扱ったことのない分野の問題も出てきますが、これは仕方ありません。

試験時間は1問あたり40秒ぐらいしか考える時間がありません。あまり悩むことができませんので淡々と問題を解き進めていくことになります。終了後、受験者が結果を見て「自分って、結構偏った分野の知識しかないなぁ。。。」と思ったり、スコアを見てニンマリしたりすることもあるでしょう。それが次のステップに繋がるきっかけになり、スキルアップのための学習テーマも絞れて効率があがると考えられます。

組込み初級エンジニアが自己の学習や実務経験を経てスキルチェックに使えば勉強の成果に確証を得ることができます。足りない部分を補習するための指標にすることもできます。組込み分野の中級エンジニアが腕だめしで受験するのも使い方の例として適切でしょう。

将来の産業全体のためにもどの組込み分野にも通用する教育を

組込みソフトウェアの基礎となるスキルはそう難しくありません。コンピュータが好きか嫌いかという前に「ものづくりが好きかどうか」です。ほんのちょっとのきっかけがあれば、驚くほど短期間に貴重な人材に成長し戦力になります。

そのきっかけの段階で(教育の効率の悪さなどで)つまずいてしまうと、つらさだけが印象に残ってしまい、二度とその人は応用分野の広い組込みソフトウェアの世界には戻ってきません。

何事も最初が肝心です。組込みソフトウェアが日本のものづくり産業の行く末を左右するまでになっている今、OFF-JT教育カリキュラムの適切な利用、そしてスキルチェックのためにJASA組込みソフトウェア技術者試験をうまく活用することが重要です。

ソラン信濃事業本部ビジネスサポート事業部
エンベデッド1グループ
グループマネージャー 梶原理機
http://www.sorun.co.jp/

※nikkeibp.jp events SPECIALより転載

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