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プロジェクトマネジメントを事業のコアコンピテンスとする企業

前回のコラムに引き続き、PMI東京支部会長・瀬尾氏に、プロジェクトマネジメントが注目されている理由や、プロジェクトマネジメントに力を入れている企業の共通点について紹介していただきます。

プロジェクトマネジメントが注目されている理由

プロジェクトマネジメントの重要性が社会的にも認知され、国内においてもPMP資格取得者数がここ数年、年間50%を越える驚異的な増加をみせ、2006年末には既に1万8000名を超える勢いとなっていますが、どのような背景・理由があるのでしょうか。

1.企業にとって失敗の許されないプロジェクトが増加

最も顕著な理由としては、「企業にとって失敗の許されないプロジェクトが増加している」ことがあげられます。「企業の合併・統合プロジェクト」、「ERPを利用した基幹システムの再構築」、「銀行のシステム統合プロジェクト」が代表的な事例です。いずれのプロジェクトも、プロジェクトの失敗が即企業生命を絶つほどの重みを持ったプロジェクトです。 これらプロジェクトの共通点として、プロジェクト自体が、企業の生き残りをかけた重点施策となっているケースが多く、事業のトランスフォーメーションや、業界再編成、また、企業の生き残りをかけた競争力強化が、大きなスコープとなっています。

2.ITサービス業における「請負システム開発事業」の赤字問題

二番目の背景・理由として、ITサービス業における「請負システム開発事業」の赤字問題があげられます。決められた金額でプロジェクトを受注した場合、平均売上高利益率5%の業界ですから、一つのプロジェクト失敗が、企業収益に大きな影響を及ぼしています。ITサービス業でのプロジェクトマネジメントに対する積極的な取り組みは、業界における「厳しさ」の裏返しであるとも言えるでしょう。

3.プロジェクトマネジメント業務の著しい増加

三番目には、「定常業務」ではなく「プロジェクトマネジメント業務」が、著しく増加していることがあげられます。少し古い統計ですが、2000年では世界のGDPの25%がプロジェクトにより生産されています。生産ラインを通して車の製造を行う仕事は「定常業務生産」、衛星の打上げ、原子力炉発電所の建設、システム開発などは「プロジェクト生産」と区別しての統計結果です。世界的には、まだ記憶に残るシステムの2000年対応が、プロジェクトマネジメントに対する経営者の関心度を飛躍的に高めたと言われています。

プロジェクトマネジメントを事業のコアコンピテンスにすえる企業

企業の中には「プロジェクト遂行」を事業の根幹としている会社があります。代表的なのは「SIer(エスアイアー)」と呼ばれているITサービス企業であり、システムインテグレーションなどの事業を提供している会社です。

多くのIT企業は既に、ハードウエア、ソフトウエア事業から、システムインテグレーションやアウトソーシングなどのサービス事業に軸足を移しています。これらの企業では、既に1社で1000名〜2000名を超えるPMP資格取得者を輩出しており、まさに、プロジェクトマネジメント力を会社のコアコンピテンスに位置付けている、もしくは、企業競争力の根源を、プロジェクトマネジメント力としているわけです。

プロジェクトマネジメントに熱心な企業は、何もIT産業だけにとどまりません。以前より、大手の建設会社ではプロジェクトマネジメントへの熱心な取り組みが行われています。伝統的なシンクタンクである三菱総合研究所なども良い事例です。

三菱総合研究所の場合、調査・研究、コンサルティング、ITソリューションの各事業は、すべてプロジェクトから構成されています。極論するとプロジェクト以外は行っていないと言ってよいほどで、事業そのものが年間1000を越すプロジェクトの遂行により支えられています。

このような企業では、プロジェクトマネジメントに対する取り組みが全社的に行われています。ちなみに、三菱総合研究所では、既に全研究員の2割ほどがPMP資格を取得しています。それも、ここ数年の企業努力ですから、やがては大半の社員がPMP資格取得者などという時代が来るかもしれません。

プロジェクトマネジメントに力をいれている企業にみる共通点

プロジェクトマネジメントに熱心な企業には、いくつかの共通点があります。

1.トップマネジメントのイニシアティブ

第一はトップマネジメントのイニシアティブです。現実問題として、プロジェクトマネジメント力の向上はそんなに簡単なものではありませんし、PMP資格の取得は企業努力の一部の表れにしかすぎません。

すべての企業が例外なく、失敗プロジェクト経験を持つといって過言ではありません。失敗プロジェクトに対し、通常いずれのケースにおいても「反省と対策」が取られますが、プロジェクトマネジメントに熱心な企業は、トップマネジメント自らが先頭に立って強化策の推進にあたっています。

失敗プロジェクトの原因は、どのプロジェクトでも「なぜもっと早く実態が把握できなかったのか」、「プロジェクト計画書の品質はレビューされたのか」、「受注時の入り口管理は的確であったのか」など、ほぼ共通です。

これらの課題をさらに分析すると、実に多くの分野で改善が必要になることに気がつきます。「財務・管理会計の仕組みの改訂」、「事業遂行組織の大幅変更」、「品質管理プロセスの変更」、「人材・スキル管理体系の作り直し」、はては、「売上計上基準の変更」にいたるまで、事業の根幹をなす重要プロセス、ルールの変更にまで対策が必要になります。トップマネジメントがイニシアティブをとらないかぎり、これらの企業プロセスの根幹にメスを入れることはできないのです。

2.プロジェクトマネジメントオフィスの組成

第二はプロジェクトマネジメントオフィス(以下、PMO)の組成です。PMI東京支部法人スポンサー企業調査によると、昨年末ですでに50%の企業がPMOを設置済みで、PMO設置の検討企業を含めると70%までにも及びます。また、同調査結果にみるPMOに求める役割のトップ5には、以下のような項目があげられています。

◆ プロジェクトマネジメントプロセスの整備と維持
◆ プロジェクトの状況把握と経営への報告
◆ プロジェクトマネジャの育成
◆ 重点プロジェクトの支援
◆ プロジェクトマネジメントシステムの導入と維持

3.PMP資格取得の推進によるプロジェクトマネジャ個々人のレベルアップ

第三はPMP資格取得の推進によるプロジェクトマネジャ個々人のレベルアップです。前述の三菱総合研究所にお聞きすると、

「当社ではPMP資格取得促進のみならず、現場のプロジェクトマネジャ向けにリスク・採算管理から品質管理に至る強力な支援体制をしいています。」(長阪匡介三菱総合研究所執行役員プロジェクトマネジメントセンター長)

「PMP資格取得者が、常にプロジェクトマネジメント知識を最新にし、継続的スキル向上が図れるよう、メンタープログラムを実施しています。」(菅原章文三菱総合研究所グループリーダー)など、全社的な取り組みがうかがえます。

上記のような各産業界におけるプロジェクトマネジメントへの取り組み、PMP取得者数が増加している状況に応じて、PMI東京支部では、すべての組織、企業、中央官庁、地方公共団体がプロジェクトマネジメントに対し、より積極的・効果的に取り組めるよう、積極的に支援していきたいと思っています。

PMO統計出典:PMI東京支部ステークホルダー委員会報告書

PMI東京支部会長・瀬尾 恵
http://www.PMI-tokyo.org/

<プロフィール>
日本IBMにてサービス事業に従事の後、現在、三菱総合研究所にてソリューション事業を担当。PMI東京支部会長としてプロジェクトマネジメントの実践普及に尽力。

※nikkeibp.jp events SPECIALより転載
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