人材紹介会社に聞く <1回目>
厳しいこの時代、企業が求めている人材とは?

2010年01月20日掲載

今回から3回にわたって、転職市場を取り巻く現状と今後の展望、求められる人材や給与事情などについて、人材紹介会社へのインタビューを通じてご紹介していきます。

1回目は「企業が求めている人材とは?」
100年に一度といわれる不況の中、リストラを実施したり、新卒採用を停止したりする企業が増えているのは皆さんご存知の通りです。一方で、積極的に中途採用を実施している企業があるのも事実です。
どんな企業が採用を行っているのか、企業が求めている人材とはどういった人たちなのか―
2009年の総括と2010年の展望も踏まえ、人材紹介会社のロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社のIT コマース シニア コンサルタントJesse Kercheval(ジェシー カシュバル)氏と、IT スペシャルティ ファイナンス コンサルタント 安藤 聡子氏にお話を伺いました。

ロバート・ウォルターズ・ジャパンとは〜
職種別にチーム体制を組んで優れた人材を紹介するエージェント

ロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社は、英国に本社を置くロバート・ウォルターズ・グループの日本支社で、2000年に東京オフィスを開設し、今年で10周年を迎えます。 業界をまたいだ職種別のチーム体制を敷いているのが特徴です。多くの日本の人材紹介会社はメーカーや金融など、その業界を基準として転職活動を支援しますが、ロバート・ウォルターズ・ジャパンは職種を基準とし、「人事マネジャーの転職活動を支援」というように、その職のスペシャリストにフォーカスしているのが大きな特徴です。

ロバート・ウォルターズ・ジャパンが外資系企業ということもあり、英語が使えないと履歴書も見てくれないのでは?と思ってしまう候補者の方も中にはいらっしゃるそうですが、決してそういうことは無いのでご安心を。最近の動向として、英語はあくまでコミュニケーションツールであり、「英語が出来る=仕事が出来る」ではないと企業側も考えており、経験をより重視してきているそうです。英語に対して敷居が高いと感じている人にとっては、明るいきざしなのではないでしょうか。

■動きの遅かった2009年

− 2009年を振り返って、商工業、金融サービスそれぞれの市場はどのような状況でしたか?

ロバート・ウォルターズ・ジャパン 株式会社
IT コマース  シニア コンサルタント
Jesse Kercheval(ジェシー カシュバル)氏

Kercheval氏:商工業では、ベンダー企業、テクノロジー企業共にとても動きが遅い1年で、第一、第二四半期はほとんど動きがありませんでした。全体的に見て、どの企業も出だしはとても遅かったのですが、7月から8月に採用のピークを迎えました。レイオフなどで少なくなってしまった人材の補強のために募集をかけていたようです。 特に製薬企業では動きがとても遅く、1年を通して採用を行わない企業もありました。

安藤氏:金融全体で見ていくと、商工業とそれ程変わらないと思います。保険業界では、空いたポジションを埋めていくという感じでした。ビジネスが拡大したから採用を拡大したのではなく、あくまで欠員補充、リプレイスメントという位置づけでしたね。逆に中小ベンダー、特にオンライン系やソフトウェアハウス、コンサルティングファームなどの動きが活発でした。中小企業のビジネスが決して良いわけではありませんが、この時期を良い人材を採用するチャンスととらえて採用を行っている会社もありました。

−採用のプロセスが長くなってきている、という話を最近聞きますが、そういった状況は見受けられたのでしょうか。

Kercheval氏:確かにそうですね。本社での最終選考という段階になっても、時間をかけて選考をするようになったと思います。今まで3回だった面接が5回になったという例もあるようです。

安藤氏:人員削減のため日本オフィスにシニアマネジャーがいなくなってしまったので、シンガポールやロンドンと電話で面接するという場合もありました。外国オフィスとの面接だと、日程設定に時間がかかってしまう場合が多く、その結果採用プロセスに時間がかかってしまう、ということは確かにありますね。

先の見えない不況により採用そのものに慎重になってしまったり、採用を再開しても慎重に選考プロセスを進めたりした企業の姿が浮かび上がってきました。人件費は社内経費の中でもかなりのウェイトを占めますから、無理の無いことなのかもしれません。

■テクニカルスキルだけではダメ。企業は付加価値を求めている

− 商工業、金融サービスそれぞれで「企業が求めている人材」とはどのような人なのでしょうか。

Kercheval氏:IT技術者の場合、テクニカルなスキルはもちろんのことですが、ユーザー側と上手にコミュニケーションを取れる能力が求められています。サーバーエンジニアやプロジェクトマネジャーについても同様です。ITILの資格や知識をもっている人も求められていますね。
一般的に言えば、ひとつの仕事にとどまって経験を積んでいる人、短期間に転職していない人が好まれています。日本語がネイティブでなおかつ英語がビジネスレベルなバイリンガルも同様に求められています。

ロバート・ウォルターズ・ジャパン 株式会社
IT スペシャルティ ファイナンス
コンサルタント
安藤 聡子氏

安藤氏:今までは開発のディベロッパーであれば開発のことだけ知っていればよかったのですが、もう少しいろいろな付加価値を持った人を雇いたいという意向が採用企業側に出てきています。 例えば、開発業務のみでマネジャーになった候補者の履歴書を企業に送ると、「当社では開発だけではなくビジネスプロセスを知っている人が欲しいので、当社の希望と合致しません。」といわれてしまう場合があるのです。金融業界全体でそういった要求が多いと感じています。

安藤氏:契約形態の違い、という切り口で見ると、正社員に対して求めるスペックの高さと、契約社員に対してのそれとのギャップが出てきています。 採用企業が「このポジションは正社員で」「このポジションは契約社員で」というように、ポジションによって契約形態と候補者の質を細分化してきているので、完全な二極化がおきてしまっているといってもよいでしょう。

一昔前では「この技術を持っている人なら誰でもいいから採用する」といった流れもありましたが、現在はそういったことは全くないのですね。テクニカルスキル+コミュニケーションスキル、テクニカルスキル+ビジネスプロセスの理解といったプラス@の付加価値が求められているようです。 ポジションによって契約形態と候補者の質を細分化しているというのは興味深い話です。 採用される側から見ると、「一度契約社員として働いてしまうと、正社員として採用されるのが難しいのでは?」と思ってしまいます。一方で採用側から見ると、企業にとって継続的に必要なポジションは正社員で、短期的なポジションは契約社員でというような「使い分け」を行うことで、コストを下げる狙いがあるのでしょう。

■昨年ほどではないが、依然厳しい2010年

− 商工業、金融サービスそれぞれの2010年の展望を教えていただけますでしょうか。

Kercheval氏:日本経済の先行きに左右されると思います。現在の円高が今後どうなるかによって輸出関連企業への影響は計り知れないものがありますし。2010年の始めはスロースタートになるのではないでしょうか。もちろん2009年より良くなることを願っています。

採用の動きには1年のサイクルがあります。通常1、2月は動きがとても遅いですが、4月にはその年の予算が決まり、5月には採用がスタートします。シニアに対しては、年末に動くことが多いです。営業年度が終了し、予算が一段落したところで新たな機会を求めて転職に目を向けることが多いからでしょう。2010年もこれと同じような状態が続くと思われます。

安藤氏:2009年は、積極的に採用を行っている企業、全く採用を行っていない企業、様子見をしている企業といったようにグループ分けされていました。2010年は2009年に比べて採用の枠は安定してくるのではないかと思っています。今まではリプレイスメントばかりだったのが、今後は新規の採用も増えていくのではないか、と希望的観測も含めて考えています。引き続き厳しい状況は変わらないと思いますが、2009年ほどではないでしょう。

− 中長期的には、日本の転職市場はどのように変わっていくと考えていますか?

Kercheval氏:将来的には日本もアメリカやオーストラリアのようになっていくと思われます。これらの国の転職市場は既に成熟しています。当社が日本に進出した10年前は、転職市場というものはそれ程大きくなく、一般的に違う会社で働く、キャリアチェンジをするという意識があまりありませんでした。10年たって、最近では会社を変わることへの抵抗も少なくなり、転職市場というものも認知されてきたと感じています。

安藤氏:「エージェントをどのように使い分けるか」がキーとなってくるのではないでしょうか。今でも候補者によっては、外資系に強いエージェント、日系の大手エージェント、コンサルティング専門のエージェントなど、それぞれに強みを持つエージェントに複数登録している方がいます。その傾向は今後も続くことが予想されるため、私たちにとっても非常に競争の激しい市場になっていくでしょう。

やはり年が新しくなったからといって、劇的に状況が変化するわけではなさそうです。円高などの経済状況によっても左右されるとは思いますが、少しでも市場の動きがよくなる事を期待します。 中長期的な視点でみると、転職市場は徐々に成熟し、日本も欧米と同様に「エージェントとうまく付き合う」時代が来るのかもしれません。

■常に情報をオープンに。市場での自分の価値を把握することが大事

− 最後に、今後候補者になるであろう方々にメッセージ、アドバイスをお願いします。

安藤氏:終身雇用制度が完全に崩壊した現在、自身のキャリアをどのように形成していくかと考えたとき、エージェントや情報をどのように活用していくかが重要になってきます。転職を考えていないときでも常に自分の情報を公開し、いつでも機会に対してオープンでいることが大事です。 エージェントに登録=転職と考えるのではなく、エージェントから求人情報を受け取ることで、「自分が市場でどれだけ価値があるのか」を理解するととらえてはいかがでしょうか。

転職はタイミングです。転職したいと思ったときに自分にマッチする求人があるとは限らないので、タイミングをどのようにいかすかが重要です。エージェントに登録したからといってすぐに面接を受けるといったアクションをとる必要はありません。Web検索しているだけでは十分な情報は集まりませんから、まずはエージェントを通じて情報収集をして自分の価値を確認し、それから面接に望む、ということでも良いのだと思います。

今すぐ転職する気はないけれど、興味のあるポジションがあれば面接を受けてみるといったように、常にアンテナを張っておいてください。

確かに転職はタイミングが重要です。転職しようと思い立ってからエージェントに登録して情報収集を開始するのではなく、常に情報収集を怠らず、自分の市場価値を確認しておくことが重要なのですね。皆さんもまずはご自身の履歴書や職務経歴書をアップデートすることから始めてみてはいかがでしょうか。

今回は転職市場の2009年の総括と2010年の展望ならびに企業が求めている人材についてご紹介しました。次回は「人材紹介会社に聞く 2回目:採用企業と候補者間のギャップ」をご紹介します。

プロメトリック株式会社
鹿倉 一葉

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