トレーニング企業に聞く:2010年人気のコース・スキルは?

2010年07月14日掲載

日進月歩で新しい技術が生まれるIT業界。どの技術を身につければ良いのか迷う方も多いのではないでしょうか。今回は、IT系の技術研修やヒューマンスキル研修を幅広く実施している株式会社富士通ラーニングメディアを訪問し、景気後退の影響やトレーニングコースのトレンドについてお聞きしました。

お話を伺ったのは、執行役員 ナレッジ・ウィング本部長 兼 ナレッジ・コークリエイティング・ラボ室長 越野 洋一氏と同本部 サービス部 部長 三原 乙恵氏、同本部 コンテンツ第二部長 古橋 誠氏とビジネス推進本部 ビジネス推進部 プロジェクト課長 西井 道太氏の4名です。

■2009年~2010年の市場の変化

− 貴社では集合研修や一社研修など様々な研修を行っていらっしゃいますが、2009年と2010年を比較して、トレーニングの市場はどのように変化していると感じていらっしゃいますか。

西井:定期講習の受講者数という切り口でいうと、2009年の10月〜12月は全般的に受講人数が減りました。2010年1月以降はだんだんと好転し、4月以降はさらに上向いた感じがしています。景気の底をついたという判断がされたためかもしれません。

定期講習の受講者数が減った一方でeラーニングの受講者は減少しませんでした。出張費や受講費用を抑えるという目的で、今まで定期講習を受講していた方々がeラーニングに移行したのではと考えられます。

三原:一社向け研修では、お客様と一緒にニーズを引き出しながらカリキュラムを作りあげていくというコースのニーズが年々増えています。例えば、「Office」を教わるコースでは満足されず、実際に業務に役立つ知識を習得したい、といった目的意識がより明確になっているのだと思います。

その他には、新入社員を預かるトレーナーやOJTリーダー向けの研修の要望は非常に多くなっており、年々増えてきています。いわゆる「ゆとり世代」が入社してくる時期になり、迎える側にも「どのように新人と接したらいいのだろう」という不安を持っていることが多いようです。そのため、新人を迎える心構えや、トレーナーとしてどのように新人と接し、指導していけばよいかを指導するトレーニングが求められているのだと思います。

■「ネットワークの基礎」は不動の1位

−貴社は毎年総合ランキングとトレンドコースランキングを出していらっしゃいますが、2009年度版のランキングから、どのような傾向があるとお考えですか。

西井:総合ランキングの1位の「ネットワークの基礎」は、この数年、常に1位になっています。安定した需要があるということなのでしょう。幅広い年代・経験の方が受講しています。

古橋:「ネットワークの基礎」以外のネットワーク関連では、実機を使った実践トレーニングが受講者に非常に人気です。やはり実機を使ってネットワークの設定する機会はあまりないからではないでしょうか。

執行役員 ナレッジ・ウィング本部長 兼
ナレッジ・コークリエイティング・ラボ室長
越野 洋一氏

越野:「ネットワークの基礎」は特に人気ですが、「データベース基礎」なども人気です。IT技術などの基礎コースはニーズが高いですね。

三原:去年も今年も変わらず人気なのは、プロジェクトマネジメントとITIL関連のトレーニングです。
「プロジェクトマネジメントの基礎」は総合ランキングの2位に入っていますし、「ITサービスマネジメント基礎ワークショップ(ITILv3対応)」はトレンドコースランキングの1位に入っています。ITILに関しては、基礎コースの人気が圧倒的に高いですね。

越野:技術系以外のカテゴリでいうと、コミュニケーション、プレゼンテーション、問題解決などを含めヒューマンスキル全体の要望が多くなっています。若手向けのコースですが、「現場力養成!若手社員の仕事術 〜コミュニケーション編〜」や「現場力養成!若手社員の仕事術 〜プレゼンテーション編〜」などのコースの人気が高くなっています。

表1:2009年 総合ランキング 〜講習会(集合研修)〜

2009年4月〜2010年2月の期間に開催された講習会(集合研修)コースの受講者数総合ランキング

順位
コース名
カテゴリ
1
ネットワークの基礎
ネットワーク
2
プロジェクトマネジメントの基礎
プロジェクトマネジメント
3
UNIX/Linux入門
UNIX/Linuxサーバ
4
データベース基礎
データベース
5
業務に役立つ!Excelマクロによる日常作業の効率化
業務改善のためのIT活用
6
基礎から学ぶシステム運用管理・実践トレーニング
〜障害管理、変更管理、SLAなど〜
システム運用管理
7
SEに求められるネゴシエーションスキル
−顧客・社内組織・協力会社との交渉術−
ネゴシエーション
8
シェルの機能とプログラミング
〜UNIX/Linuxの効率的使用を目指して〜
UNIX/Linuxサーバ
9
プログラム開発におけるレビュー・テスト技術の基礎 アプリケーション開発技術
10
COBOLプログラム(基礎編) 言語

表2:2009年 トレンドコースランキング

2008年度と2009年度の受講者数を比較し、2009年度に申込数が大きく増えたコースのランキング

順位
コース名
カテゴリ
1
ITサービスマネジメント基礎ワークショップ(ITILv3対応)
ITサービスマネジメント
2
システム管理者のためのWindowsServer2008基礎
Windowsサーバ
3
システム要件定義の基礎
アプリケーション開発技術
4
現場力養成!若手社員の仕事術
〜コミュニケーション編〜
新入社員/アソシエイト向け
5
Linux仮想マシン機能(Xen)によるサーバ仮想化環境の構築と管理
UNIX/Linuxサーバ
6
VBプログラミング入門(オブジェクト指向文法編)
Webアプリケーション開発技術
7
現場力養成!若手社員の仕事術
〜プレゼンテーション編〜
新入社員/アソシエイト向け
8
スタイルシートによるホームページの作成 Webコンテンツ開発技術
9
ISMS内部監査実践トレーニング
〜ロールプレイングによる監査実務スキルの修得〜
情報セキュリティ/コンプライアンス
10
COBOLプログラマのためのJavaプログラミング入門 言語

表1,2 出典:株式会社富士通ラーニングメディア

ナレッジ・ウィング本部
サービス部
部長 三原 乙恵氏

三原:プロジェクトマネジャーやアプリケーションスペシャリストといった職種別の受講人気ランキングでも、コミュニケーションやネゴシエーションといったコースがランクインしています。

技術の基礎とヒューマンスキルをセットで実施したいというニーズは確かに多いですね。若手に対する研修にはそれが顕著です。新人研修は圧倒的にヒューマンスキルやビジネススキルのウェイトが高くなっています。以前は研修の段階で技術をもう少し重点的に教えていたのですが、今では技術は現場に入ってから徐々に身につければいい、という考えに変わってきているようです。

配属先によって必要になる技術が以前よりも非常に幅広くなってきているので、全社共通で最低限ここまではという条件を絞り込みにくいのではないでしょうか。そのため、技術的なことはそれぞれの配属先に任せる、といった動きになっているようです。

■2010年力を入れるトレーニング内容、形態

−貴社が今年力を入れているトレーニングはどのようなものでしょうか。

ナレッジ・ウィング本部
コンテンツ第二部長
古橋 誠氏

古橋:技術系でいうと、「体験!クラウドコンピューティング」というコースを2010年6月からはじめています。いろいろなクラウドサービスを実際に使ってもらってサービスを理解してもらおうというエントリーコースなのですが、非常に人気があります。2010年1月ごろから、「仮想化」の内容が含まれるコースは申し込みを開始するとすぐに満席になってしまい、キャンセル待ちが発生するくらいの盛況ぶりです。

クラウド関連については、今後は体験コースから一歩進めて、各ベンダー別のコース展開をしていこうと考えており、サービスを利用してシステムを作る側とサービスを使う側、2つの観点でコースを準備する予定です。
システムを作る側では、サーバの仮想化など仮想化基盤に関するコースは全部そろえる予定です。一方のサービスを使う側は、SaaS(Software as a Service)ですね。既にSalesforce.com関連については認定コースを中心にコースを展開していますし、今後はGoogle関連のコースを準備していこうと考えています。

越野:ヒューマンスキル系では、若手向けだけではなく、マネジャーやリーダー向けの研修を充実させています。ネゴシエーションやモチベーションマネジメントといったところでしょうか。どの企業でも、マネジャーやリーダーを育成したいというニーズが高まっています。

また、新たなサービスを提供する取り組みに力を入れています。人や組織、あるいはグループによっていろいろなタイプがあるので、こうやれば必ずうまくいく、という答えを教えるトレーニングではありません。技術や知識を教えるだけでなく、グループディスカッションを行うことでいろいろな気づきを得て、現場に戻って実践していく、そんなタイプのトレーニングが必要とされているので、それらを提供していきます。

西井:トレーニングの形態という点ですと、集合研修やeラーニングにこだわらない研修形態も取り組んでいます。その一つとして遠隔研修があります。遠隔研修は集合研修でもeラーニングでもなく、リアルタイムで講師とコミュニケーションしながら進める研修で、家でも会社でもご受講いただけます。2009年から始めているのですが、今後はコースの数を少しずつ増やしていこうと考えています。

もう一つは、eラーニングと集合研修あるいは遠隔研修の複合型の研修です。当社では「ハイブリッド研修」と呼んでいるのですが、研修の形態を教室での研修にこだわらず、ニーズにあわせて提供していければと考えています。「【ハイブリッド】ITサービスマネジメント基礎ワークショップ(ITILv3対応)」などニーズの高いコースで提供しています。

■基礎をしっかり身につけることが一番の近道

−最後に、ITプロフェッショナルを目指す読者の方々へのアドバイス、メッセージをお願いいたします。

古橋:クラウドや仮想化のような新しい技術がでてくると、それをまず身につけないといけない、という気持ちになりますよね。それも重要ですが、サーバ仮想化の勉強をしようとしたときに、基礎となるネットワークやストレージについての知識がないと、いくら仮想化の勉強だけをしても理解することはできません。新しい技術を身につけることも重要ですが、基礎がしっかりしていないと新しい技術に対応できないのではないでしょうか。
一見遠回りに見えるようでも、基礎をしっかりしておくことが知識習得の一番の近道になると思います。

越野:「何のためにその資格を取るのか」をしっかりと認識した上で勉強するなら良いのですが、ときに「資格を取得すること」そのものが目的となってしまう場合があります。
自分の将来も含めて、自分がどこに向かっているのかをきちんと見極めた上で行動すれば、今勉強している知識の価値も上がっていくのだと思います。

現状の業務に必要だから資格取得するという場合もあるでしょうが、現状と将来の両方を見据えたうえで必要な知識を判断し、学んでいくのが良いのだと思います。

(文中敬称略)

取材を終えて-

今回の取材を通じて、企業がトレーニングに求めているものが少しずつ変化しているという印象を受けました。基礎から応用までといった一般的な知識を勉強させるのではなく、実際の業務に役立つ知識を習得させたいというように目的意識をより明確にすることで、トレーニングによって得られるものをより具体化しているのだと思います。

新人研修において、基礎となる技術はトレーニングで習得させ、それ以上についてはそれぞれの現場で身につけさせる、というのも変化の一つと言えるでしょう。その分、ヒューマンスキル全体の要望が高くなってきているのかもしれません。

「現状と将来の両方を見据えたうえで必要な知識を判断し、学んでいくのが良い」というメッセージは、以前掲載した「人材紹介会社に聞く <2回目>採用企業と候補者間のギャップ」でJesse Kercheval氏が述べていた「自分の進みたいキャリアパスが明確に見えてくると、必然的にどんな資格が有効なのかが分かると思います。」という言葉と通じるものがあります。

ITプロフェッショナルを目指す皆様には、「基礎をしっかりしておくことが一番の近道」というアドバイスを参考に、今後の知識習得に取り組んでいただければと思います。
富士通ラーニングメディアでは、今回ご紹介したもの以外にも様々なランキングを発表しています。ご覧になりたい方はこちら

プロメトリック株式会社
鹿倉 一葉

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