スキルアップコラム:新春特別リサーチ:エンジニアに必要な資格は?

景気がなかなか回復しない日本経済を反映して、新卒者の就職活動はバブル崩壊後の就職氷河期以上に厳しいといわれています。中途採用においても、条件が厳しくなった、面接の回数が増えた、採用までに時間がかかるようになったという声を、みなさんも聞いたことがあると思います。

 

そういった厳しい環境の中では、これから就職される方や転職者に限らず、すでにエンジニアとして活躍している方にとっても、仕事における自分の価値を客観的に示す方法として、資格が有効となるのではないでしょうか。今回は、常に現場で必要とされるエンジニア像を把握している派遣会社の資格取得支援制度から、企業がどのような資格をもった人材を求めているか、また、エンジニアに必要とされている資格が何かを探ります。

2011年1月19日掲載

15万円の一時金も!資格取得支援制度の内容

総務省が発表している有効求人倍率(求職者(仕事を探している人)1人に対してどの程度の求人があるのかを示すもの)は、平成20年度から1を切った状態になっており、依然として厳しい雇用情勢が続いていることがうかがえます。企業が新卒や中途採用といった正社員採用に慎重になる中、「即戦力」としての派遣社員のニーズが徐々に高まっているのかもしれません。

そのような状況の中、資格取得を支援する制度を設けている派遣会社がいくつもあります。制度の背景には、登録スタッフのモチベーションを上げるため、スキルアップに意欲のあるスタッフを集めるため、さらには、制度の結果として登録スタッフの派遣率や派遣単価の上昇への期待など、さまざまな理由が考えられます。

いくつかの派遣会社を調査したところ、支援する方法は主に以下の3つでした。

  1. 合格一時金の支給
  2. 毎月の賃金に資格手当を上乗せ
  3. 受験料金支給

その他には、資格取得に必要な書籍の購入費用を支援したり、スキルアップのための講座を開設したりしている派遣会社もあります。なお、制度の利用条件として、登録スタッフとして一定期間就労していることや、就労中に資格取得したことをあげている派遣会社がほとんどでした。

表1:派遣会社別資格取得支援制度(2010年12月 プロメトリック調べ)

会社名 A社 B社 C社 D社
手当の
種類
合格一時金
月々手当
受験料金支給
手当や支援の
内容
資格手当
取得した資格に応じて月3,000〜10,000円の手当てを12ヶ月間支給
合格一時金支給
取得した資格に応じて15,000円〜30,000円の一時金を支給
合格一時金支給
取得した資格に応じて15,000円〜150,000円の一時金を支給
合格一時金支給
取得した資格に応じて5,100円〜100,000円の一時金を支給
ポイント制度
就業するごとにポイントを支給し、貯めたポイントを使用してスキルアップのための講座受講が可能
書籍購入支援
資格取得等に関する書籍を年間5,000円分まで負担
受験料金支給
合否にかかわらず、一回目の受験料金を支給
書籍割引購入
技術専門書を特別価格で提供

それでは、派遣会社はどのような資格に対して手当を支給しているのでしょうか。
対象を合格一時金に絞って一覧にしたのが「表2:資格取得支援制度 資格別合格一時金」です。
マイクロソフト認定資格、オラクル認定資格や情報処理技術者試験などIT業界ではおなじみの資格試験が並んでいるのがわかります。これらの資格試験は派遣会社が登録スタッフに期待するものであり、派遣先企業が求める人材要件に適合する資格試験であるといえます。

表2:資格取得支援制度 資格別合格一時金(2010年12月 プロメトリック調べ)

対象資格・試験 B社 C社 D社
マイクロソフト
認定資格プログラム
(MCP プログラム)
マイクロソフト認定テクノロジー スペシャリスト(MCTS) 15,000円
マイクロソフト認定 IT プロフェッショナル(MCITP) 31,500〜78,750円
マイクロソフト認定プロフェッショナル デベロッパー(MCPD) 47,250〜94,500円
Linux技術者認定試験(LPIC) LPIC-1 15,000円 31,500円
LPIC-2 30,000円 31,500円
LPIC-3 50,000円 31,500円
オラクル認定資格制度
データベース認定資格
Oracle Master Database Silver, Gold 15,000円 22,260円
Oracle Master Database Platinum 15,000円 100,000円
オラクル認定資格制度
Java 認定資格
Oracle認定ビジネスコンポーネントディベロッパ(OCJ-BC) 15,000円 31,500円
Oracle認定Javaディベロッパ(OCJ-D) 15,000円 63,000円
Oracle認定Javaプログラマ(OCJ-P) 15,000円 31,500円
シスコ技術者認定 CCNP(Cisco Certified Network Professional) 15,000円 100,000円 75,600円
CCIE (Cisco Certified Internetwork Expert) 15,000円 100,000円
情報処理技術者試験 情報セキュリティスペシャリスト試験 50,000円 70,000円 5,100円
システムアーキテクト試験 50,000円 70,000円 5,100円
プロジェクトマネージャ試験、
ITサービスマネージャ試験
50,000円 100,000円 5,100円
ネットワークスペシャリスト試験、
データベーススペシャリスト試験
50,000円 100,000円 5,100円
システム監査技術者試験 50,000円 150,000円

一時金の金額は、派遣会社や対象試験によって異なっています。派遣会社もしくは派遣先企業の得意分野や規模によっても変わってくるのでしょう。
個別に金額をみると、情報処理技術者試験では支給金額の差が顕著に表れています。プロジェクトマネージャ試験合格者に対してC社は10万円支給しますがD社では5,100円と、9万円以上の開きがあります。また、システム監査技術者試験では、C社は一時金を15万円も支給するのに対し、D社ではそもそも合格一時金支給の対象になっていません。
一方で、上位レベルの資格や取得が困難な資格には高めの合格一時金を支給する、という点は共通した傾向のようです。

いずれにしても、国家資格である情報処理技術者試験については、その汎用性が派遣先を問わず現場での応用力を期待され、各ITベンダー資格については、製品や技術の専門性による即戦力を期待しているものと思われます。

企業が求める資格は

続いて、派遣社員を受け入れる企業側がどのような資格を求めているのかを、「日経コンピュータ」の記事「いる資格、いらない資格」(2010年11月10日号 日経BP社発行)を参考に見ていきます。2010年から、掲載内容が「ITベンダーの技術者が取得すべき資格」「ITベンダーの営業担当者が取得すべき資格」「ユーザー企業のシステム担当者が取得すべき資格」の3つのカテゴリ別に変更されています。

図1:ITベンダーの技術者/営業担当者、ユーザー企業のシステム担当者が「取得すべき」資格ベスト3
(出典:日経コンピュータ 2010年11月10日号)

表2と図1を見比べると、図1でランクインしている情報処理技術者試験とITベンダーの認定試験のほとんどが表2に盛り込まれていることが分かります。派遣会社にとってITベンダーやユーザー企業は派遣先企業となるわけですから、派遣会社が、それらの企業が求める資格を取得している登録スタッフの獲得やスタッフの資格取得支援に力を入れるのは当然のことと言えるでしょう。

また、派遣会社の資格支援制度には入っていませんでしたが、PMPやITIL、ITコーディネータといった、技術系ではないマネジメント系資格が図1にはランクインしています。ITベンダー、ユーザー企業を問わずランクインしていることから、さまざまな企業で対象資格の保有者獲得や有資格者の育成が見込まれることが考えられます。
英語のスキルを測定するTOEICが高い位置につけているのは、企業の海外進出やインドや中国等の外国企業へのアウトソーシングなどを見込んでのことなのかもしれません。

今の業務とこれからの自分を見据えたスキル構築を

今回ご紹介した派遣会社の資格取得支援制度や「いる資格、いらない資格」をご覧になって、どのように感じましたか?「これから受験しようと思っていた試験は市場価値がありそうだ」「この試験は毎年のようにランクインしているから、市場で認知された資格なのだな」など、人によって感じた点はさまざまだったと思います。

エンジニアの方々が資格取得する目的として多くあげられるのが、「今の業務に必要だから」という点ではないでしょうか。もちろんそれも大事なのですが、5年後や10年後自分がどんな仕事をしているか考慮してみるのはいかがでしょう。

エンジニアの方が「30代はSEとして働きたいが、40代はプロジェクトマネージャとして業務に携わっていきたい」と考えたとしましょう。

  • 今の業務に必要な知識としてMCPプログラムを受験しよう。
  • プロジェクトマネージャとして働くためにPMPは取得したいけれど、システム運用についても知っておいた方がよいので、まずはITILの資格を取得しよう。
  • 日本以外でのプロジェクトにも参加したいので、英語のスキルを磨かないと。

といったスキル構築が考えられるのではないでしょうか。
今持っている知識とすぐに必要な知識、もう少し先に必要となる知識というように分類・整理したうえで、2011年のスキルアップ目標を考えてみるのも良いかもしれません。

プロメトリック株式会社
鹿倉 一葉

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