みなさんが使っている携帯電話はスマートフォンですか? 2010年に入って携帯各社からAndroid搭載携帯電話が続々と発売されたこともあり、スマートフォンへの変更や2台持ちを検討している方も多いことでしょう。にわかに世間一般に知名度が高まったAndroidですが、まだ比較的新しい技術ということもあり、今後は技術者不足が懸念されます。そんな中、一般社団法人Open Embedded Software Foundation(以下OESF)ではAndroid技術者のスキルを認定する試験制度、Android技術者認定試験制度(OESF Authorized Certification Engineer for Android / ACE:エース)を2010年11月より開始しました。制度開始の狙いや今後の展開について、ACE運営事務局 近森 満氏にお話を伺いました。 |
2011年3月16日掲載
− Android技術者認定試験制度を創設したきっかけを教えてください。
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OESF ACE運営事務局 |
近森:Android搭載携帯電話が世に出たとき、「iPhoneにはかなわないのではないか」という声も聞かれましたが、私はそう思いませんでした。なぜならAndroidもLinuxと同じオープンソースだからです。Linuxがさまざまなシーンで活用されている現状を見れば、Androidも必ず受け入れられるだろう、同じような広がりを見せるだろうと思ったのです。
AndroidにはOpen Handset Alliance (OHA)という団体があって、世界中の企業や団体が協力して開発を行っています。新たな技術の開発に向けた活発な活動を見ると、間違いなく何かが起きる、と感じました。
OESFの活動目的は、 Androidを組込みシステムのプラットフォームとし、携帯電話以外のさまざまな機器・システムに対して、共通フレームワークやプラットフォームを参加会員各社で共同開発し、その普及を促進することです。目的達成の一環として、OESFではAndroidを使用した開発技術の基礎から実践まで幅広い知識を身に付けることができる認定トレーニングを実施してきました。
知識を身につけるためのトレーニングが重要なのはもちろんですが、資格関連事業に長年携わってきた今までの自分の経験から、Androidを普及させるには技術者の知識を正しく測定し認定するための制度も必要だと考えました。それが本制度設立のきっかけです。 日本がこの分野で世界に先駆けて活躍するためには、資格制度を日本から発信する必要があるという思いもありました。
−Android技術者認定試験制度の概要をお聞かせください。
近森:試験はアプリケーション技術者認定試験とプラットフォーム技術者認定試験の2つに分かれており、それぞれの試験にベーシック、プロフェッショナルの2つのレベルがあります。2011年3月現在、アプリケーション技術者認定試験ベーシックの配信を行っており、今後その他のレベルの試験を順次実施していく予定です。
試験の種類 | レベル | 試験範囲 | 共通項目 |
---|---|---|---|
アプリケーション 技術者認定試験 |
ベーシック | ・Androidプログラミング ・Javaプログラミングの知識 ・スクリプト言語 ・オブジェクト指向 ・Android基礎知識(アプリ視点) |
・開発環境(Eclispe, SDK) ・NDK, JNI ・デバック技術、デバック手法 |
プロフェッショナル | |||
プラットフォーム 技術者認定試験 |
ベーシック | ・Linuxの知識 ・ライブラリ概要 ・Bionic ・HAL ・起動シーケンス ・Android基礎知識(プラットフォーム視点) |
|
プロフェッショナル |
−受験対象者はどのような方々なのでしょうか。
近森:Androidの開発に携わる技術者はもちろんですが、Webアプリケーション開発者やJava開発者、iPhoneアプリ開発者、モバイル開発者などが対象です。最近では大学・高専や専門学校でAndroidの教育を開始しているので、それら各種学校の教師、学生も対象となります。
Android技術者認定試験に合格することで、受験者は第三者機関が認定した知識を保持していると証明できます。学生の場合、履歴書にAndroid技術者認定試験合格と記載することが、就職活動を有利にするための一助になるかもしれません。今後はビジネスアプリを作成できる技術者の育成が重要になってきますから、技術者個人が自己の能力確認に活用するだけではなく、企業が社員の技術力向上のために活用していくことが考えられます。すでにAndroid開発をビジネスとして行っている企業ではACEを採用し技術者支援を行っています。今後はACEの取得者が先頭に立ち、業界をリードしていくことを期待します。
−本制度の特長をお聞かせください。
近森:独立行政法人情報処理推進機構が策定したETSS(組込みスキル標準)に準拠した「ETEC(組込み技術者試験制度)」と連動している点があげられます。Android技術者認定試験に加えてETECを受験することで、単にAndroid関連のスキルを証明するだけでなく、組込み技術者としてのスキルチェックを行うことができます。
もうひとつの特長として試験内容があげられます。本制度で行う試験は、バージョンにあまり左右されない、Androidのコアな部分を問う内容になっています。一方で、バージョンアップが進むにつれて試験内容が陳腐化していく懸念もあるので、OESFとしてはその点に留意して適切なタイミングで試験のバージョンアップを行っていくつもりです。
− 新試験の配信など、今後の展開を教えてください。
近森:現在試験配信を行っているのはアプリケーション技術者認定試験のベーシックのみなので、2011年夏を目処にプロフェッショナルレベルの試験を開始したいと考えています。プラットフォーム技術者認定試験については現在開発中ですが、こちらについては2011年度中に開始できるように準備を進めています。
Androidは日本だけではなく欧米など他の国々でも求められる技術なので、英語版の試験配信、日本以外の国での試験配信も視野に入れて準備を進めています。
認定トレーニングについては、現在8社が認定トレーニングパートナーとしてトレーニングを行っています。「認定トレーニングを実施したい」という要望も寄せられているので、今後は認定トレーニングを実施する企業も増加していくことが予想されます。
− 最後に、Android技術者認定試験合格を目指す方へのメッセージ、アドバイスをお願いします。
近森:最初に言えることは、「幅広い知識を身につけてください」ということです。Androidだけではなく、他の組込み技術やLinuxなど幅広い知識を身につけることで視野が広がり、Androidの良さや改善点が見えてくるのではないでしょうか。
また、技術者は常に最新の技術を身につけておく必要があります。Androidの最新版は現在バージョン3.0です。ハードウェアの生産がそのスピードに追いついていないために、市販されているハードウェアで動いているのはバージョン2.2が主流です。けれども、技術はどんどん進化しています。1年後にその最新技術を使ったハードウェアを発売するためには今から開発を行うため、最新の技術を身につけておく必要があるのです。
Androidのような比較的新しい技術を身につけるためには、受け身ではなく積極的に自分から動くことが重要です。その技術が日本語でまだ紹介されていない場合は、英語のサイトで調べる必要があるかもしれません。技術は日々進歩しますから、守りの姿勢ではなく攻めの姿勢を保ってください。
「自分で技術を体験する」必要もあります。当たり前のことですが、Android搭載携帯電話を使ったことがなければ、その携帯電話にどのような機能があって、どんなときに役立つのかわかりませんよね。体験して初めて、「この機能は便利だ」「こんなアプリがあったらいいのに」といった考えが浮かんでくるわけですから。また、携帯電話やアプリを使うときにもただ漠然とではなく、「なぜ/どのように動いているのだろう?」と疑問を常に持ちつづけて欲しいですね。
Androidの知識を身につけるためには認定トレーニング受講が有効ですが、まとまった時間が取れない、という場合には、書籍を使った勉強も有効です。 2010年11月には、日経BP社から対策実践問題集が出版されました。模擬問題も収録されているので、そちらを参考に試験合格を目指すのもよいのではないでしょうか。
みなさんご存知のとおりAndroidは新しい技術なので、今後は携帯電話だけではなくさまざまなビジネスシーンでの利用が考えられます。銀行や証券といった金融系のクリティカルなシステムにまで利用が広がれば、技術者が足りなくなるのは明らかです。
「いまさらAndroid」という状況ではありません。まさにこれからの活用が期待されるAndroidにぜひチャレンジしてみてください。
(文中敬称略)
取材を終えて- 試験制度がスタートしたばかりだということもあり、今後配信開始予定のプロフェッショナルレベル試験の準備でお忙しい様子の近森氏。AndroidのコードネームがDonut(ドーナツ)やGingerbread(ジンジャーブレッド)といったスイーツ関連の名前だということに話がおよぶと、「日本の技術者の間では、Gingerbreadのことを『神社』と呼んでいるそうです」といったこぼれ話も聞かせてくださいました。
Android搭載携帯電話の相次ぐ発売により、一気に一般の人々にまで知名度が高まったAndroid。今後携帯電話以外での活用が広がれば、技術者の需要が伸びていくのは容易に想像できます。 今後の活用を見込んで、まずはAndroid技術者認定試験制度のアプリケーション技術者認定試験ベーシックに挑戦してみてはいかがでしょうか。
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