人材紹介会社に聞く <2回目>
採用企業と候補者間のギャップ

2010年02月17日掲載

前回は2010年の展望や企業が求めている人材についてご紹介しました。 今回は「採用企業と候補者間のギャップ」と題して、企業が求めている資格や、採用企業と候補者間のギャップについてご紹介します。
前回に引き続き、お話をうかがったのはロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社のIT コマース シニア コンサルタント Jesse Kercheval(ジェシー カシュバル)氏と、IT スペシャルティ ファイナンス コンサルタント 安藤 聡子氏です。

■商工業ではMCPとITIL、金融では実務関連資格+技術資格

− 採用条件に具体的な資格名が出ることはありますか?ある場合はどのような資格でしょうか。

ロバート・ウォルターズ・ジャパン 株式会社
IT コマース  シニア コンサルタント
Jesse Kercheval(ジェシー カシュバル)氏

Kercheval氏:資格は、必須ではないけれど「持っていれば尚可」といったことが多いです。採用企業にとって資格は、その方が持っている知識や経験の判断材料の1つです。たとえばMCPを持っていればマイクロソフト製品に関する知識があり、CCNAを持っていればネットワークの知識を持っていることがわかります。かといって「まず資格ありき」ではありません。基本的にはその方のパーソナリティーと経験が重視され、その上で知識を確認するために資格を参照します。

転職する上で有利と考えられる資格となると、MCPとITILがあげられます。MCPは他の業界からIT職へ転職を希望される方や、リストラで現在仕事から離れている方が復職する際に有効です。またIT技術をビジネスサポートに活かす知識が身につくITILは、すでにIT職についている方がさらに1つ上のポジションを目指す際に役に立つ資格だと思います。

安藤氏:スペシャリストとマネジャー職とでは求められる資格は異なってくると思います。もちろんネットワーク系ならばシスコの資格が求められる、といったことはありますが、その資格だけで判断されるわけではありません。確かに書類審査は通過するかもしれませんが、その後の面接で自分の経験、知識、役割等を十分に説明できないと、「資格だけで実績を積んでいない」と判断されてしまいます。

金融でよく言われているのは実務関連試験+技術資格です。外務員資格試験証券アナリストといった実務の資格を持っていて、なおかつシステムも知っていると強いですね。特に日系企業では即戦力になる、と思われる傾向があります。

Kercheval氏:ネットワーク系で言うとCCIEの価値が今まではとても高かったのですが、今後はCISSPの価値がCCIEよりも高くなっていくと思います。CISSPはセキュリティ業界において価値の高い資格として広く知られています。企業のセキュリティに対する関心は増しており、IT部門だけでなく、個人情報の保護方法やポリシーに関わる部門でもスペシャリストを必要としています。 2010年になってもその傾向は変わらず、セキュリティに関する需要はますます高まっていくことが予想されます。

−採用活動を行う中で、特別な資格やスキルに対してのギャップを感じたことはありますか?

Kercheval氏:それほど大きなギャップは無いと思います。ただ、候補者と面談しているとき、「私はどんな資格を取るべきでしょうか?CCNA、それともMCPですか?」と聞かれることがあります。そんな時私は、自分がどの分野の仕事をしたいかによって取るべき資格は異なります、とアドバイスします。
ネットワークエンジニアに興味のない人がネットワーク系の資格を取っても無意味です。けれども、ネットワークエンジニアやサーバーエンジニアがセキュリティの資格を持っているのは良いと思います。自分の進みたいキャリアパスが明確に見えてくると、必然的にどんな資格が有効かが分かると思います。

安藤氏:外資系の企業から、「プロジェクトマネジャーを探しているので、PMP取得者を希望する」と要求をいただく場合があります。最近は日本でもPMPを取得する候補者が増えてきましたが、以前はそれ程浸透していませんでした。企業側から「必須項目としてPMPを求む」と言われてしまうと、せっかく素晴らしいプロジェクト管理経験を持っている候補者がいても、書類審査の段階で採用見送りとなってしまいます。

当社としてはPMPが必須項目であったとしても、優れた人材であれば紹介します。資格はあくまでもプラス事項の1つであり、プロジェクト管理能力、規模、期間、内容といった実績から、その方の経験が分かるはずです。職務経歴書にはそれが現れていますので、そこにも注目してほしいと採用企業に説明しています。

■採用企業の思惑:このご時世だから良い人材を採用しやすい

− 「企業が求めている人材」と「転職を希望する人」の間のギャップを感じるとしたら、どんなところでしょうか?

Kercheval氏:最大のギャップは、候補者はスペシャリストからマネージメントレベルへキャリアアップを望んでいるのですが、採用企業はスペシャリストを求めているというところだと思います。
最近の雇用事情はほとんどの場合、退職された方のポジションを補充する状況にあるのに比べて、人材市場としては次のステップへ進みたい技術者が増えてきていることが原因だと思います。
技術的なところでは、日本にはまだビジネスインテリジェンスやデータハウジングに関する人材が不足していることです。もしこれらに関する人材紹介を求められた場合、インドやアメリカなど外国の候補者の中からできれば日本語を話せる候補者を探し、紹介することが多いです。

ロバート・ウォルターズ・ジャパン 株式会社
IT スペシャルティ ファイナンス
コンサルタント
安藤 聡子氏

安藤氏:一般的なことを言うと、景気後退のせいで良い人材を簡単に取れると思っている企業が多いかもしれません。実際は、良い人材、なかなか補充がきかない人材は企業側が手放さないというのが実情です。ところが、採用企業からすると、「多くの企業がリストラを行っていれば、良い人材がすぐに見つかるのではないか?」と思ってしまうのです。

募集を行う際の年齢層にもギャップがあります。企業はマネジャーなどのシニア層を人員整理でスリム化し、従業員全体の年齢層を下げようとしています。その結果、比較的給料の安い28〜35歳までのジュニア、中堅層に人気が集中してしまう傾向があります。これは、金融業界だけに限ったことではく、どの企業もこの年齢層の補充を最優先に掲げ採用活動を行っています。

例えば、経験豊富でマネジャー経験者を企業に紹介した場合、「いや、当社は若手を急募している」と言われてしまいます。現在のマーケットでは、若手を採用し、社内で育てていきたいということと、人件費を押さえたいという狙いがあるようです。

■転職希望者の思惑:転職すれば何かが良い方向に変わるかもしれない

− 転職を考えている人たちと会ったときに「現状を理解していないのでは…」と思うことはありますか?

Kercheval氏:頻繁ではありませんが、「私は今の会社に満足していないので、他の仕事を探しています。何か良い仕事はありませんか?」と言われる方や、給与に対して柔軟になれない候補者とお会いすることがあります。こういった方々は、最近の転職事情の難しさがあまり理解できていないと思われます。現在ほとんどの企業は厳しい経営状況にあり、給与に関しては採用企業側と候補者の双方が譲り合わないとならない状況だと考えています。

一方、既に離職した候補者で「年収は低くてもかまいません。何でもやらせてください。」と言われる方がいます。この場合、採用企業は「この候補者はとりあえずの場つなぎで当社に入るつもりなのではないだろうか?景気が戻った途端に年収の良い会社に転職してしまうのではないか」と考えてしまいます。低過ぎても高過ぎてもいけない給与の問題はなかなか難しいですね。

安藤氏:候補者の中には現在の会社に不満をお持ちで、転職先の会社では状況が改善され、年収、責任感、やりがいなどの面で変わるのではないかと漠然とした希望を持って当社にお越しになることがあります。


常に良い会社で働きたい、という気持ちはわかるのですが、雇う側からすると、退職する前に上司や人事に相談したり、社内移動やトレーニングを受けるなど、自分自身で何か対策は取れなかったのかと疑問を感じたり、人間関係に問題があるのではないかと危惧したりしてしまう場合もあります。
採用ポジションに求められる技術的なスキルや経験はもちろん必要なのですが、最近ではソフトスキル、パーソナリティーの部分にも重点が置かれてきています。技術面とパーソナリティーの両方をかんがみて、慎重に採用を検討する企業が多くなっているのです。そういった面で候補者と採用企業とのギャップは感じますね。2,3年前は技術面を重視して採用する傾向がありましたが、現在の状況は全く変わってきているのです。

− 履歴書を見たときにストーリーがあるかどうか?というのはよく言われることですね。

Kercheval氏:そうですね。履歴書だけで候補者を判断するのはとても難しいことです。その際、これまでの経歴が1つのストーリーとしてつながれば、その候補者を知るうえで非常に助けになります。また採用企業によい印象を与えることにもなります。特にIT技術者は営業職に就いている方々とは違い、うまく話しをすることが苦手な方が多いですから、履歴書にストーリー性を持たせることはとても重要です。

取材を終えて-

情報漏洩や不正アクセスなど、企業はセキュリティの問題に日々直面しているので、セキュリティ資格の関心が高まってきているのは納得のいくところです。実務関連試験+技術資格が有効というのは、前回のコラムにもあった「企業は付加価値を求めている」に通じるものがあります。

また、転職すれば何か変わるかもしれない」という漠然とした思いだけでは良い仕事は見つからない、ということを改めて感じました。自分はこういった会社で働いてみたい、こういった事をやってみたいから転職する、という具体的な目的を持つことに加えて、日ごろから情報収集をかかさず、自分の市場価値を認識しておくことも重要ですね。

みなさんの履歴書にストーリーはありますか?

今回は、企業が求めている資格や、採用企業と候補者間のギャップについてご紹介しました。次回は「人材紹介会社に聞く 3回目:ボクの給料は高い?安い?2010年給与調査」をご紹介します。

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